情報セキュリティの歴史がわかっておもしろい。断片的に知っていたことがつながる。Referencesもきちんとしている(ページ数で全体の1/5を占める)。CISSPの本でしか知らなかったことが出てきたりする。

日本語タイトルは「敗北史」とキャッチーだが内容は濃密。1970年代のコンピュータ黎明期から始まり、経済学、心理学も駆使しつつ、事例とともに、著者の史観が展開される。例えば、1980年代、形式的検証に関する手法が米国の国主導で策定されるも、開発より検証のコストが何倍もかかるため、安価なPC、脆弱なプロトコルに市場の大半がシフト。我々は以後悩まされていく、という主張など、各時代の底流を鋭くとらえた論は、単に歴史でなく、どうして今こうなったか、これからどうなっていくのか、我々はどうするべきかを考えるヒントになると思われる。

黎明期より情報セキュリティについて説明し、各時代の対策と結果について時系列で触れています。技術的な部分には触れていませんので、「マネジメント」だけの自称サイバーセキュリティの専門家の人達には言葉を追うだけになるかも知れません。内容としては、この分野においては本質的に防御側が不利であることや、時には対策そのものが無意味どころか逆効果になった事例、更に近年の「スタントハック」に対する警鐘等、広く触れています。一度頭を整理して視点を設定し直すためにも、専門家であれば是非読むべきでしょう。

タイマー機能の設定の解説がわかりやすく本当に良いガイドブックだと思います。

出来ること、やり方、等はしっかり書かれているが、エラーが出た時の対処法が全くない。個々に対応するのは大変だとは思うが、この本に頼らなければいけないような読者には、せめてエラーメッセージの一覧みたいなページが必要だと思う。

情報技術のうち、伝達形式・方法の歴史や未来については興味深く読めたのだけど、肝心の情報処理については内容が薄すぎる。これで全史というのは羊頭狗肉ではないか。

ITの歴史が年表を見るようにわかる。エピローグの内容は本の目的から逸脱しており、よくわからない。筆者がAIに関して否定的な意見を持つ内容もあり、少し残念